研究概要 |
本研究の目的は,トヨタ自動車の海外工場を対象として,トヨタ生産方式の海外移転の進化について明らかにすることである。トヨタ生産方式はJITと自働化の二本柱で表現されるが,現場従業員の技能がそれらを機能させる上で決定的に重要である。平成19年度の調査研究の課題は,欧州における現地工場の調査であった。 平成19年度は,トヨタ自動車の欧州地域統括本社とフランス工場を訪問した。前者ではトヨタ自動車の欧州生産戦略についてインタビューを行い,資料を提供していただいた。トヨタ自動車はイギリスにトヨタ生産方式の教育訓練を行う施設を設立し,欧州全工場への技術の移転を推進しており,成果をあげている。後者では,フランス工場におけるトヨタ生産方式の移転状況について,インタニューと工場見学を行った。フランスでは,労働時間の規制が厳しいもとで,3組3交代制を導入することで必要な生産量を確保していた。また,技能移転に関しては,教育訓練を徹底し,賃金において査定を導入することで,従業員に技能レベルの向上を促していた。昨年度の研究成果とあわせていうと,トヨタ生産方式のうちJITは最も移転が容易であり,そして品質管理を工程で自動的に管理する「自働化」は,現場従業員の技能レベルに依存するものであるが,国際競争に必要な品質レベルを実現する従業員の技能レベルは実現した,と評価できる。
|