私共3名の共同研究は、1990年代の世界が経験した通貨・金融危機以降の世界における適切な為替レート制度はどのようなものであるか、またあるべきかという問題であり、近年言われてきた厳密な固定制か、または自由変動制かの二極端点解が本当に正しいのかという疑問に取り組む意欲的な共同研究であります。 この問題に取り組むに際しては、現実の世界では管理フロート制という中間的な制度が広範に採用されているという事実を認識し、実は管理フロート制という中間的制度が、一国の厚生水準から見て望ましいことがありうるのではないかと考えて、分析を進めて参りました。この1年間では、為替レート制度に関しては基本的に3国モデルを援用しなければ意味が無いことを認識しつつ、この分野の先行研究として周知の「浜田モデル」を改良しながら、管理フロート制度の厚生分析を、手始めとして特に小国の厚生に限定して分析をし続けて参りました。 中間的な管理フロート制度では、為替レートが長期均衡水準から乖離した場合には、通貨当局による市場介入があるため、それをモデル化する必要がありますが、それに関してはMarstonやDa Silvaたちの過去の先行研究を参考に、浜田モデルに組み込むという作業を続けて、ある程度の成果が得られております。この方法は単純ではありますが、分析が容易になるという利点を持っております。また、浜田モデルは、基本的にBarro-Gordonモデルを用いた厚生分析であり、静学的であるという点では限界もありますが、分析結果が明確に示されるという長所もあり、これを用いて、来年度は私共のモデル分析を完遂致したいと考えております。できれば少し動学的な分析についても検討致したいと考えております。
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