2007年度は、小国にとっての最適な為替レート制度を分析するモデルの決定を視野に入れて精力的にモデルの改訂に勉めた。モデルは変動レート制を考慮するために必然的に3国モデルとなり、その分複雑にならざるを得ない。また、為替レート制度には、De Jureの制度として中央銀行・為替当局の公表した制度と、De Factoの制度としての、為替当局が実際に採用する制度の間に大きな違いがあることがわかっているため、それらの組み合わせをも考慮して、厚生分析は極めて複雑になった。 厚生面から接近するために、小国の損失関数を大国の損失関数と類似のものと仮定し、失業とインフレからの損失を政府・中央銀行が最小化するようなモデルを構築し、変動レート制度、固定レート制度、中間的制度の3つの制度下の厚生水準を比較検討した。中間的な制度における政府の為替介入をいかにモデル化するかに腐心した。 構築したモデルに基づいた分析から、以下のようないくつかの重要な結論が導出された。(1)変動レート制は中間的制度よりも厚生上優位にある。(2)de factoの中間的制度では、de jureの中間的制度の厚生が、de jureの変動制よりも高いことがある。(3)de factoおよびde jureの中間的制度と固定レート制の厚生では、中間的制度の厚生水準の方が高い。(4)de factoおよびde jureの変動制と固定制の厚生では、変動レート制の方が高い。(5)de jureの変動制でも、de factoで変動制の方が、de factoで中間敵な制度のときよりも厚生水準は高い。(6)de factoとde jureの固定制と、de jureで変動制でありde factoで中間敵な制度では、後者の制度の厚生水準の方が高い。その他いくつかの結論が得られた。
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