研究概要 |
本年度は実施計画に基づき以下の研究活動を行った。まず第1に昨年度に調査した尾道方式を中心とした都市型地域医療モデルについてまとめた。特に尾道方式に遅れて参加した厚生連尾総合病院を2008年3月3日に調査し,尾道方式が直面する問題点を中心に分析を行った。これによって尾道方式をより多面的に捉えるこどができた。また農村型地域医療の実践で有名「ゆきぐに大和総合病院」(新潟県南魚沼市)について2008年2月28日に調査し,農村型地域医療が危機的な状況に陥っていることを知った。第2に,昨年度に資料を収集してきたアメリカのコミュニティ保健センターに関する資料を並行しながら少しずつ整理を進めた。しかし,収集した資料が膨大な量に上るので,未だ作業の途中にある。第3に,9月にスウェーデンのストックホルムの医療・福祉機関4カ所を調査し,貴重な知見を得た。特にスウェーデンでは「介護計画作成会議」が医療と福祉の連携を図る制度として全国的に実施されており,社会的入院を減らし医療費を抑制するメカニズムとして機能していた。これは偶然にも尾道方式における退院前のケアカンファレンスと類似したものであり,名称は異なっていても医療と福祉の連携を円滑にする重要なメカニズムとして機能している。医療費の膨張に苦しんでいたスウェーデンが1992年のエーデル改革以降,今日に至るまで医療費抑制に成功している一因もこのメカニズムの導入にあった,と私は確信を深めた。この尾道方式とスウェーデンの医療・福祉の連携メカニズムを中心にまとめを行い,できるだけ早期に活字にしておく積りである。最後に2007年9月のスウェーデン調査の際に,ストックホルムとペンパーゲンの図書館で英文の北欧医療保障制度の文献を探したが,ほとんど存在していなかったので,2008年3月にロンドンのLSE図書館などを中心に資料収集を行い,十分な成果を得ることができた。
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