本年度の研究成果は以下の4点である。第1に、平成18〜19年度に実施した国内の地域医療活動(包括ケア)に関するヒアリング調査、ストックホルム県内4ヵ所で実施したヒアリング調査を論文「スウェーデンと尾道の包括ケア・システムに関する報告」にまとめ、『社会科学論集』に発表した。尾道方式は主治医を中心に医療と介護・福祉の連携を図り、医療費の抑制と患者のQOL向上に成果を挙げている。筆者は尾道方式が他の都市部でも導入できる都市型地域医療のモデルとなり得ることを示した。第2に、日本における包括ケア・モデルをより洗練化するために佐久病院の地域ケア科と地域医療連携室のスタッフにヒアリングを行なった。また都市型モデルとして長崎在宅Dr.ネットについても調べ、病診連携や診診連携を通じて包括ケアが各地に拡大していることを明らかにした。第3に、スウェーデンのリンショーピング大学の教授と前述の論文「スウェーデンと尾道の包括ケア・システムに関する報告」について議論する予定で調査旅費35万円を計上しておいたが、訪問予定の教授が突然退職してしまったために、目的を果たせず、代わりにロンドンのLSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス)の図書館で欧米の高齢者包括ケアに関する最新の論文を収集した。第4に、アメリカの地域保健センター(CHC)についてもまとめの作業を行ったが、高齢者包括ケアはPACEに焦点を絞るべきだという結論に達した。幸いにもPACEの研究に対しては平成21〜23年度の科研費補助金が認められることになった。
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