本研究は医療費抑制と良質の医療を両立させる地域医療(地域包括ケア)について国際比較を行ない、以下のような結論を導き出した. 第1に、日本の事例研究は(1) 救急特化と後方連携(地域連携支援病院の急性期特化と開業医の在宅療養支援診療所化)を進め、それを(2) 病診連携・診診連携(長崎在宅Dr.ネット、24時間診療体制)、(3) ケアカンファレンス、(4) 訪問診療・訪問介護などによって支えることにより、地域包括ケアが都市部でも実施できることを明らかにした. 第2に、スウェーデンは1992年のエーデル改革後、長期ケアの3分の2を県からコミューンに移管し、県=保健医療、コンミューン=福祉という縦割り行政の弊害を是正した. この医療(老人医療)と福祉の統合は介護計画作成会議や5日ルールなどの新制度にも支えられて、医療費抑制と良質の医療を両立させる地域包括ケアとして機能していた.第3に、アメリカの地域保健センター(CHC)は貧困地域の健康状態を改善するために包括医療と公衆衛生を結合し、多職種チームによる保健サービスを提供していた. CHCは地域包括ケアを通じて地域の健康状態の改善にある程度の成功を収めると共に、貧困層でも通院できるような診療体制を築いて貧困層の入院や救急室の受診を削減するという成果を挙げた. このように地域包括ケアは国際的にも医療費抑制と医療の質向上に成果を挙げていたのである.
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