研究概要 |
当初アメリカにおける公的年金制度の詳細を調査し、日米の制度の比較を行い、その上で日本にPfauの手法を適用する予定にしていたが、アメリカの制度に適用されたPfauの手法(Pfau, Wade (2003) Essays on Social Security Reform. Princeton University Ph.D.Dissertation)をアジアの諸国に適用することによって、その汎用性を高め、その上で日本への適用を試みるほうが効率的であることがこれまでの作業で明らかになってきた。そこで、一方で日本における人口予測にモンテカルロ法を組み込んだ先行研究の改善の余地をさぐりつつ、ベトナムとタイについて、Pfauの手法を適用する試みを進めた。ベトナムについては高齢者の間での各種の格差が問題であることを明らかにすることができ、公的年金の拡充の必要が明らかになった。同時にその制度設計についておおまかな展望を得た。タイについては2008年に予定されているNational Pension Fundの導入が高齢者年金全体の制度に関するsuitabilityを検討した。その結果、タイの労働者はsuitableな公的年金を受け取ることができるがそれはほとんど確定給付の部分から来ることが明らかになった。さらに今後sustainabilityの検討をする必要がある。 以上のほか、アメリカと日本について年金や社会保障全体や老後の不安と貯蓄率の関係について実証研究を行った。アメリカについてはFeldsteinの研究(貯蓄を社会保障資産によって説明するもの)についてデータを追加して再計測した結果、Feldsteinの導いた結論はある程度支持されるが、一部に彼の結論と大きく異なるものも見出されることがわかった。日本については最近の貯蓄の低下から想像される結論とはことなり、老後の不安が貯蓄と強い関係をもっていることが見出された。
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