研究概要 |
19年度には,主題に関わって3つの内容について検討を進めた。 第1に,医療、福祉領域の雇用の位置を明らかにする為に,イギリスの有償労働と無償労働との合計値に占める前者の位置を明らかにした。これに従えば有償の介護及び保育労働の比率は,労働時間の長さを尺度に計測すると12.8%を占る。他の87.2%は無償労働である(2000-2001年)。 第2に,医療、福祉サービスの領域における専門職化は,英仏両国において共に政策課題の一つであるものの,問題は,その位置である。専門職化は,要介護者等のニーズに対応してサービスの質を引き上げる不可欠の課題として提起されるとはいえ,同時に,外国人労働力の一段の導入とこれによる労働力不足の解消が,政策課題の一つとされており,これは,専門職化の方向と矛盾する。外国人労働力の一段の利用は,専ら労働力の量的な確保との関わりにおいて論じられ,職業資格の取得や訓練水準の引き上げとのかかわりは不明であるからに他ならない。 第3に,専門職化の試みが効を奏するか否かは,医療、福祉分野における労働条件の引き上げに左右されることが少なくない。関係する労働者が従来にも増して教育訓練への関心を強める会中は,サービスの質への関心に止まるわけではなく,賃金を始めとする労働諸条件の向上を要件にするからである。 研究主題に沿うまとめの作業は,これらはもとより18年度に行った内容も踏まえて最終年度の課題である。
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