まず、労働力の専門職化の背景をなす労働力の規模と労働諸条件に関わって、特に労働力の就業者中の比率について英仏両国を含む9カ国を対象に独自の推計を踏まえて明らかにした。これに従えばケアワーカーは4.1-5.7%(イギリス)、5.1-8%(フランス)を占める。これは、福祉国家の類型を異にする南欧の2.4%(スペイン)や東欧の3%(ハンガリー)より高いとはいえ、北欧の10%(デンマーク)や9-13.5%(スウエーデン)よりも低い。また、イギリスは3.0-3.3%(アメリカ)や4.5%(カナダ)よりもやや高いと共に、フランスは7-7.6%(オランダ)と重なり合う。移動率が高く、高齢化などに伴うニーズの引き続く上昇と相俟って労働力の慢性的な不足状況にあることは、特徴のひとつである。 労働力の専門職化は北欧諸国において最初に切り開かれ、初発の経験としてデンマークの1960年代以降の取組みがある。英仏両国の取組みは、ヨーロッパ連合のリスボン宣言(2000年)や同じく『社会的保護と社会的包摂戦略』(計画期間2008-2010年)等におけるサービスの質の向上に関する指摘とも相俟って、ケア基準に関する2000年法と2級以上の職業資格取得者の増加(60%、2004年)、あるいは、社会生活助手国家資格証明(DEAVS)の新たな制度化と職業資格を持つ労働者の基本賃金の引き上げ(2002年、フランス)などの動向を確かめることができる。これらが、ケア水準の引き上げに連動することは、言うまでもない。 ケア水準の引き上げとその条件としての労働力の定着化と教育訓練の引き上げは、日本の課題でもあり、英仏両国における政策経験から学び取ることは少なくない。
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