○地域国際体制についての検討 「グローカル連携による地域経済協力体制の構築:第1分冊 地域経済協力体制の検討」(科研中間報告書、名古屋工業大学、2007年)として中間報告書に取りまとめた。地域体制としてアジア太平洋地域(東南アジアと日本韓国台湾)とEUとの比較検討を行った。EU地域は政治的な共同体として連携を深めている。特に2004年の東欧拡大においては市場経済への参加支援および旧来加盟国内におけるローカル産業支援が注目された。市場原理を調整する役割をEUが担っている。これに対してアジア地域ではASEANの動きに象徴されるように政治的な地域共同利害の熟成には欠いてきた。しかしながら日系製造業企業のビジネスネットワークに主導されて実態として経済連携が進展している。日本政府の経済協力政策がめざす経済実態の連携を支援する制度づくり協力があらたな地域体制として注目される。 ○グローカル連携実態の進展について検討 「第3章 東海地区自動車・部品産業の集積と地域振興の課題」(小林英夫・丸川知雄編著『地域振興における自動車・同部品産業の役割』社会思想社 2007年、に収録)において、日本・東海地域の自動車部品産業集積の実態構造を検討した。自動車メーカーの展開するグローバル戦略にローカル同部品産業集積地がどのように連携しているのか、バリュー・チェーン・マネジメント戦略事例として同地域の個別企業の経営事例を検討した。サプライチェーン遡及型の改善提案力といった現場発のビジネスモデル変更提案力が東海地域のローカル競争優位性であることが示唆された。「グローカル連携による地域経済協力体制の構築:第2分冊 ローカル産業集積要素との連携」(科研中間報告書、名古屋工業大学、2007年)ならびに「グローバル連携型産業集積の展開」(経営行動学会年報、2007年)ではフランスにおける2大自動車産業クラスターを検討した。歴史的・地理的な産業集積要素とグローバル企業の経営戦略との連携によって地域産業振興が進展していた。クラスター政策検討におけてはグローカル連携の視点が重要であること、あらためて確認された。
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