平成18年度では、ブロードバンド産業を中心に、情報通信産業の競争政策の理論研究を進めました。 情報通信産業のネットワーク構造は、接続の形態に応じて、(1)片側接続(1ウェイ)、(2)両側接続(2ウェイ)に分けることができます。 (1)片側接続 一つのネットワーク層(レイヤー)、例えば光IPネットワークを既存事業者が独占し、新規参入者は既存事業者のネットワークに対して接続料金(アクセス・チャージ)を支払わなければ、サービスを提供できないようなネットワーク構造。このような産業構造をボトルネック独占、既存事業者の所有するネットワークを不可欠設備と言います。 (2)両側接続 複数の事業者がネットワークを所有し、一つのネットワーク層を独占する事業者が存在せず、単独のネットワーク内で自己完結の形態でサービスを提供したり、あるいは複数の事業者が相互接続することによってサービスを提供するようなネットワーク構造。 現在のブロードバンド産業を考察すると、(1)都市部では既にNTTと電力会社が光IPネットワークを敷設しサービスを提供しているので両側接続、さらにNTTは光IPネットワークを新規参入者に開放する義務を負っているので片側接続も存在しています。(2)中小都市ではNTT(場合によっては電力会社)だけが光IPネットワークを敷設し、新規参入者に開放する片側接続になっています。(3)地方ではまだNTTですら、光IPネットワークの敷設が完了しておらず、サービスの提供が始まっていません。以上、ブロードバンド産業における競争政策(ならびにそれを補完する社会政策)は地域別に異なった運用が必要であることが判ります。どのように地域別にきめ細かく競争政策を運用すればよいのかについて検討するには、(1)各地域の競争構造を別々にモデル化し、(2)各地域が併存するようなモデルの拡張を図る必要があります。 このような複雑なモデルを解くには計算力を必要とするゲーム理論的分析が必要になります。従来のモデルを拡張し、地域別・ネットワーク形態別の競争政策を、個別ではなく、総合的に分析しました。
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