研究概要 |
本年度は,92年からのロシアの法令集と,石炭・繊維の各業界紙のフォローから,ロシアの産業政策の歴史的変化を検討した。 石炭産業や繊維産業などの不況産業の事例を見ると、具体的な構造調整策は90年代初頭から大きく変容していない。しかしこれらは,これまでのところ大きな成果を挙げておらず、政策の規模の縮小や政策担当者の熱意の低下が顕著である。世銀の支援を受けた石炭産業でのリストラプログラムを例外とすれば、こうした産業政策の役割は既に終わったと言える。 プーチン政権下で現在行われている産業政策の方向性については、WTO加盟をめざすロシア政府が、今後経済への直接的な介入に極端に傾斜することは考えにくいという見方もあるが、しかし、近年のロシア政府の予算や特区の策定に見られる積極的な動きや、マスコミでの産業政策への関心の高さからみて、今後政府がさらに強力な産業政策を戦略的に打ち出してゆく可能性は十分にある。近年の産業政策を見る限り、ロシアでは「市場の失敗の是正」という観点からの介入にとどまらず、特定産業の育成が目指されており、直接的介入という古典的手法もしばしば採用されている。その意味では、ターゲットは先端産業ではあっても、産業政策の内容という点では、国際的な潮流に沿った新たな政策だとは言い切れない。 上記のような内容について,比較経営学会第31回全国大会(2006年5月13日:中京大学)において「ロシアにおける産業政策の変遷」という題目で報告した。 また,「京都リトリート・プログラム」において,The Effect of the Bankruptcy System on Restructuring of Russian Firmsというタイトルで報告した(The Kyoto Retreat Program, Economic Research Institute of Kyoto University, Supported by the Sasakawa Peace Foundation, 2006年8月22日)。
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