本研究では、3年間を予定している研究期間の初年度に当たる18年度に、技術革新行動に産業集積が外部経済性を与えているという仮説を検証するために、アンケート調査によるデータ収集を行った。アンケート票作成の過程では、この分野の研究で実績のある韓国・成均館大学経済学部のHoYeon Kim助教授を招いてワークショップを行い、研究助言を受けた。調査対象として予定していた北京の海淀区の中関村地区とブラジルのサンパウロ市に加えて、Kim助教授の支援を受けて韓国の大徳研究団地でも調査を行うことができた。それぞれの地域について約200人の研究開発に係わる研究者からアンケートの回答を得ることができた。今後この調査結果を整理して、統計分析を行う予定である。この活動の一方で濱口は技術革新と産業集積に関する理論面でのサーベイと発展的研究を行い、その成果の一部をKobe Economic & Business Reviewに論文として刊行した。この論文では経済発展の初期段階では技術開発拠点形成を行って重点的に特定地域を育成したうえで、のちに知識労働者のネットワーク化を伴った地域分散化政策を取ることが有効であるという結果を導いている。ブラジルについて行った実証研究(『ラテン・アメリカ論集』掲載)では、発展している都市は特定産業に特化した知識外部経済を活用してきたことがわかった。亀山は以前行った「東アジアにおける産業クラスターの国際比較」の調査結果を含む著書を刊行し、日中韓のIT関連企業間における産業集積内の連携の状況を比較分析した。
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