1.昨年度に引き続き、日本の中小企業のIT化に対する諸支援策と進展状況について、中小企業庁、経済産業省、情報処理推進機構等の諸支援策とその成果について具体的検討を行った。 2.フィリピンの中小企業の経営強化とIT化を明らかにするため、DTI(貿易産業省)のSME Development Plan 2004-2010(SMEDP)の進展状況とそこでのIT化の位置づけについて調べた。DTIはHPを通して中小企業の振興策として一村一品運動の推進、中小企業むけのポータルサイトの開催、全国各地にキャラバン隊を送る等の諸活動を行っている。日本政府はSMEDPの作成に協力し、その際IT化の必要性を指摘しているが、協力の重点は物づくりにある。他方ドイツ政府の支援では中小企業のIT化については日本政府より高い優先度が与えられている。ただSMEDPは2007年度まではパイロットプロジェクトの実施段階であり、2008年以降全国的展開が計画されているため、SME D PにおけるIT化の評価についてもう少し待つ必要がある。 3.フィリピンのソフトウエア産業の成長はコールセンターやBPO産業の高い成長率(年率40〜50%)に及ばないものの、それでも30%ぐらいの成長率を示している。しかしその成長の源泉の大半は外国市場であり、国内需要、特に中小企業の需要発掘という点では進展を見せていない。国連やOECD等が欧米と途上国の中小企業におけるE-コマースの実態について調査したレポートでも、途上国、特にフィリピンにおける中小企業のEコマースはまだ端緒についたばかりで、発展のための条件整備が不可欠である。 4.フィリピン政府、ICT業界団体が現在最重要視しているのは海外需要向けのコールセンターやBPO事業の拡大であり、内需の掘り起こし、中小ITソフトウエア企業の支援は優先度が低い。
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