研究概要 |
平成20年度においては,ソ連マクロ経済指標の代替推計に関する研究の第三年目として,以下のような研究がおこなわれた。 (1)昨年度に引き続き,ソ連期工業生産指数推計の精緻化が行なわれた。以前の本研究における推計との最大の相違は,工業各部門の工業全体における付加価値生産シェアを指数推計のウェイトとして用いたことである。付加価値の計算については,モスクワで得た第二次大戦前の資料が大いに役立った。本年度の研究によって,ようやく付加価値に基づく工業生産指数といえるものを推計することができた。 (2)さらに工業生産指数については,部門指数を平均するときの方式を従来の算術平均に代えて幾何平均を用いるなどの細かい改良を行なった。これにより,工業生産については,帝政期ロシアからソ連崩壊直前の1990年までの指数を一貫した方法で推計することができた(ただし,残念ながら帝政期については部門ごとの付加価値を推計することは行なわれてはおらず,付加価値の代理として労働力が使われている)。 (3)工業以外の分野については,農業を除いて具体的な生産指数を計算するには至らなかったが,その基礎となる多くのデータ,すなわち建設,運輸,通信,商業等における労働者数,労働時間,賃金,固定資本などの資料を収集することができた。これらのデータをもとに,これからも当初の目的であるソ連経済のGDPの推移を推計していきたい。
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