今年度は、インドネシアの1996、1999、2002年の家計調査データとヴェトナムの2002、2004年の家計調査データを用いて、家計消費支出格差あるいは家計所得格差の要因分析を行った。また、中国の1978年から2005年までの省別、都市・農村別の地域所得と地域人ロデータを用いて中国における地域間所得格差の分析も行った。Akita and Miyata(2008)の論文では、Akita(2003)が開発したTheil尺度の2段階要因分解式を用いて、インドネシアにおいて都市化と教育水準の向上が家計消費格差にどのような影響を与えているかを分析した。それによると、金融危機による影響がほぼ終息し実質で4-5%の成長を記録した1999-2002年の期間、家計間消費格差は大きく拡大したが、それは都市・農村間格差が大きく増加したのと同時に都市内格差も大きく増加したことが原因であることが分かった。また、都市内格差増加には、中等教育水準以上、特に大学教育水準を有する世帯間の格差が拡大したことが背景にあることも分かった。Akita and Cao(2008)の論文では、2002年と2004年の家計所得データを用いて、Theil尺度の人ログループ要因分解式とGini係数の所得項目要因分解式により、ヴェトナムの都市と農村における家計所得格差の要因分析を行った。それによると、他のアジアの国と同様に、家計所得と家計消費のどちらで計測しても都市内の格差は農村内の格差に比べて高いことが分かった。また、賃金所得は、都市内でも農村内でも全体の所得格差を軽減する要因であることが分かった。
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