本研究は、グローバル化時代における人材競争の国家戦略のあり方を探るものである。平成20年度(第三年目)においては、主に統計データと現地調査に基づいて三ヵ国のそれぞれの戦略・政策の効果を比較・分析した。主な結論は次の通りである。 1)米国は世界最大の専門人材純移入国であり、規模(量)だけでなく人材の質と多様性についても他国の追随を許していない。世界中の優秀人材が米国に集中する背景には、移民国家としての伝統(機会平等・多文化共存な社会環境)、1990年代以降実施された専門人材選好の移民政策、世界最高水準の大学院教育と魅力の高い留学サボートシステム、などの要因が挙げられる。 2)英国は、自国出身の専門人材の流出大国でもあるが、近年、留学生や外国専門人材の受人促進政策を実施している。特に、留学生の受入は、英国の外交政策と経済活動の支援者を育成する、という国家戦略のもとで強く推進された結果、2005年に同国の高等教育機関に在籍する学生に占める留学生の比率は24.9%に上昇し、米国の約5.5%と日本の約3.3%を大きく上回っている。政府戦略のほか、国際共通語としての英語の重要性が増えていることも重要な一因である。 3)日本は、主に留学生の受入を通じて、外国専門人材の受入を徐々に拡大している。外国人材の活用は、日本企業の海外進出事業などに大きく貢献した。しかし、非移民国家としての社会環境や言語環境の制限で、日本における外国人専門人材の規模は主要先進国の中では最小にとどまり、その出身地域構成も東アジアに偏っている。質を重視する留学生受入戦略の策定と外国人が定住・起業しやすい環境の構築によって人材の専門性の高度化と多様性を促進することは、日本の課題である。
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