研究概要 |
平成18年度においては,プロジェクトメンバーの6名で,中国・ベトナム・インドネシア・台湾に関する企業または事業所レベルのデータベースの作成・整備を行った。さらに,4本の論文を作成した。 まず,RametetterとPhanは,ベトナムにおける民間企業(private firm)部門が近年急激に成長していることに焦点を置き,2本の論文を執筆した。"Changes in Ownership and Producer Concentration after the Implementation of Vietnam's Enterprise Law"では,企業法施行などの政策転換の状況を概説した上で,企業数,従業員数,売上高等について統計データを用いて分析した。その結果,民間企業の企業規模や平均労働生産性は依然として低い水準にあることが示された。また,生産者集中度は低下傾向にあり,その要因分析もなされている。"Wages, Ownership, and Producer Concentration in Vietnam's Manufacturing Industries"では,多くの産業において民間企業部門の平均賃金水準は他と比較して低いこと,またその格差は産業によって異なるという結果が得られた。Cassey Leeの"SCP, NEIO and Beyond"では,産業組織論における(1)Structure, Conduct, Perfbrmance(SCP)と(2)New Empirical Industrial Organization(NEIO)に関する考察・サーベイを行った。1980年代までSCPは主流の分析方法だったが,1980年代からゲーム理論とNEIOが主流になった。しかし,発展途上国の場合にはNEIO分析が必要とするデータがなく,SCPが依然として主流であること等が示されている。Sjoholm et al.,の"FDI, Market Structure and R&D Investments in China"では,中国製造業における外国多国籍企業と生産者集中度,研究開発に関する分析を行い,外国多国籍企業の参入によって生産者集中度は低下する一方で,市場競争に変化によって企業の研究開発は影響を受けないという結果が得られた。 平成18年度の成果はワーキングペーパ4本にとどまっているが,19年度にはさらに8〜10本の論文を執筆予定である。これらの論文を審査付学術雑誌に投稿し,一部の改訂版は書籍として出版する予定である。
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