研究概要 |
平成19年度は,前年に引き続き,中国・台湾・マレーシア・タイ・インドネシア・ベトナムに関する企業または事業所レベルのデータベースの整備を行い,さらに,7本の論文を作成した。 Sjoholm, et. al.は中国製造業の雇用面における外資系企業の貢献を分析した。特に,輸出を行っている外資系企業の貢献が大きく,また外資系企業は地場企業の雇用創造にも間接的に正の影響をもたらしているという結果が得られた。Yangは台湾製造業について調べ,R&D集約度の低い産業においてはR&Dと技術輸入が生産者集中度を高める傾向があり,高い産業においては逆の傾向があるという結果を得ている。Kishimotoは台湾の大企業のデータを利用し,多くの産業において,近年,生産者集中度が上昇したことを示している。Leeのマレーシア製造業に関する結果では,輸出企業の生産性は比較的に高いが,必ずしも輸出自体が直接生産性を引き上げた重要な要因ではないこと,また,輸出に伴うR&Dが(製品革新よりも)工程革新に影響を与え,生産性が上昇した可能性があることが示された。Kohpaiboon and Ramstterが分析したタイの結果によると,1997〜98年の経済危機以降,生産者集中度は上昇傾向にあり,また複合企業体のシェアが大きい産業において集中度が高まる傾向がある。Takiiは,インドネシア製造業における事業所規模の推移について調べ,平均的にみた場合,事業所規模が収束する傾向にあることを示した。ベトナムについて調べたRamstetter and Phanの結果によれば,国営企業の生産性が比較的に低い場合が多く,国営企業が多い産業において地場民間企業の生産性も低い傾向がみられる。反面,外資系企業と民間企業の生産性格差は統計的に有意ではない場合が多く,外資系企業のシェアは民間企業の生産性に影響を与えない場合も多い。
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