研究概要 |
本一年度は以下の3つの一研究を行った。 1. 経済実験による検証 前年度に財政調整の実験として遠隔地間の独裁者ゲームについての実験を行い得られた結果を学会・研究会で報告したが、その際中間地点を調べるべきとのコメントが多かった。そのため、追加実験として新たに石巻専修大学でも実験を行い山形・石巻(山形から見て近距離)・広島(遠距離)の3地点での検証を行った。現在、得られたデータについて統計的処理など行い前年度の結果の検証を進めているところである。 2. 市町村の意思決定過程の協力ゲーム分析 提携形成のモデルを市町村合併に適用した場合の問題について論じた。Owen値は全員提携を前提とするため、提携を合併後の市町村と見立てると利得の発生原因が不明確となる。そこで、Hart&Kurz(1983)のモデルでの利得をシャープレイ値に置き換えるモデルを提案した。次に、そのモデルのパラメータを推定しシミュレーションを行い、結託耐性均衡,強ナッシュ均衡,ナッシュ均衡の概念適用した場合の結果を比較した。その結果、以下のことが得られた。強ナッシュ均衡が均衡概念として強すぎる可能性が示唆される。一方で、利得が市町村合併を決定する際に考慮される要因を十分含んでいない可能性もあるため、飛び地合併などの要因について考慮する必要がある。 3. 海外の財政調整制度を適用した場合の効果について分析 現在の地方交付税制度とオーストラリアの財政調整制度を日本に取り入れた場合との比較を行った。地方交付税による国から都道府県と市町村への財政移転をオーストラリア型に置き換えた場合をシミュレーションし、47都道府県と3,200市町村の財政格差がどのようになるか分析した。その結果、調整の原資が十分な場合には、オーストラリア型財政調整は行政コストを考慮した歳入の格差を縮小させることが分かった。
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