1.平成18年8月29日〜30日に「公共サービス支出と家計生産」に関する研究会を開催した。出席者は18名である。プログラムは以下の通りである。(1)不完全競争経済下での公共支出の乗数効果、(2)不完全競争経済下での労働課税と家計生産、(3)不完全競争と公共財・公共資本、(4)完全競争下での公共サービスと家計生産、(5)動学モデル、(6)地域経済と開放経済。本研究に関連する諸分野(財政学、公共経済学、マクロ経済学、労働経済学)の専門家から多くの貴重な意見を承った。 2.本研究と密接に関連する研究報告を聞くために春と秋に開催された日本経済学会に参加した。 3.上記の研究会や学会での質疑応答を基に、(1)独占的競争企業が差別化された財とサービスを生産し、(2)手持ち時間を余暇と市場・家計労働に配分し、労働所得を市場で供給された財とサービスの購入に向ける家計、および(3)一括税で資金調達された財とサービスの公的供給を行う政府から構成される2部門一般均衡モデルを作成した。 4.拡張的な政府支出を擁護するためにニューケインジアンの人達は、一種類の合成消費財から成る独占的競争の1部門一般均衡モデルを用いてきた。このモデルの中で、彼らは短期では利潤所得の変動を、長期では価格変動を通じて、一括税で資金調達された政府支出が正の国民所得乗数をもたらすことを論証した。しかし、この結果は消費者による合成消費財への支出割合が1に近い場合には成立しないという問題が含んでいる。本年度は、この問題を財・サービスとそれらの家計生産が行われる2部門モデルの中で検討した。
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