研究概要 |
本年度は、前年度に作成した独占的競争の完全雇用2部門一般均衡モデルの一層の精緻化と政府支出拡大効果に関する研究を行った。研究成果として、"Multiplier Effects of Public Services in a Two-Sector Model of Monopolistic Competition" という題名の英文論文が完成した。論文要旨は、以下のとおりである。 「独占的競争の2部門モデルの中で、本稿は私的サービスと代替する役割のみを担う医療などの公共サービスへの政府支出拡大と、サービスの家計生産にも貢献する介護などの公共サービスへのそれが国民所得にどのような影響を及ぼすかを検討する。企業の参入・退出が制約される短期では、前者は国民所得を増加するだろうが、後者は国民所得を減少するだろう。参入・退出が自由な長期では、全く反対の結果が得られる。」 本論文は、日本財政学会で発表した。また、台北国立大学と名古屋大学におけるセミナー、および社会経済システム研究会で報告した。現在、Scandinavian Journal of Economicsに投稿中である。 上記の研究報告と併行して、モデルを失業が伴う不完全雇用モデルに拡張する準備を行った。研究成果として、分権化された労働組合を分析対象としたKolm(1998,J.Pub.E)の研究を中央集権化された労働組合の場合に拡張した"Labour Taxation and Home Production" という題名の英文論文を執筆し、改定作業中である。 現在は、公共サービスではなく、公共財が直接的にベッカー流の家計生産関数に入り、最終消費財生産に必要な私的財と時間の投入が節約される場合の乗数効果と最適公共支出の研究を行っている。
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