本年度は、このプロジェクトの最終年度であるので、これまでの研究成果である不完全競争経済の一般均衡理論にベッカー流の家計生産理論を組み込んだ新しい枠組みに基づくモデルを構築して、二つの英文論文を完成した。論文題目と要旨は以下の通りである。 (1)"Public Goods and the Technology of Consumption under Imperfect Competition" 「本論文は、家計生産と不完全競争をもつ経済の中で公共財の分析を行う。公共財が労働と私的中間財を用いた最終消費財の家計生産をヒックス中立的に高める時には、公共財の次善供給量は最善供給量に等しいという結果が得られる。さらに、公共財が非中立的で、私的中間財(労働)投入量のみを節約するように働くときには、公共財の次善供給量は最善供給量より低い(高い)という結果が示される。」 (2)"The Balanced Budget Multiplier and Labour Intensity in Home Production" 「本論文は、不完全競争経済の中で、最終消費財の家計生産における労働集約度が国民所得と課税により資金調達された公共支出の所得乗数効果にどのような影響を及ぼすかを分析する。労働集約度の減少は、国民所得水準を増加させるが、均衡予算乗数効果の大きさを減らす。この結果は、課税手段が一括税のみならず、所得税であっても成立し、また洗濯機や掃除機などの家電製品の普及が財政政策の有効性を減らす効果をもっことを示唆する。」 なお、論文(1)は、上海財経大学、同志社大学、名古屋大学、および北九州市立大学の研究会で報告された。また、論文(2)は福岡工業大学の研究会で報告された。
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