本研究における平成19年度の成果としては、第一に、平成18年度に構築した2004-2005年度の連結単位を中心とした企業集団(上場親会社とその上場子会社)のデータベースを活用し、上場子会社について内部資本市場の観点からさらに詳細な分析を行ったことである。第二に、企業集団の再編において重要な役割を果たしつつある非公開化や公開維持型の買収についてその経済的効果を分析した。 第一の成果であるが、企業集団一般についてはグループとしての多角度と上場子会社のパフォーマンスとの関係は有意ではなく、内部資本市場が機能しているとは言いがたい結果となった。ただし低リスク・プロジエクトを遂行している上場子会社についてはグループ多角化度がそうした上場子会社のパフォーマンスを促進していることが示され、内部資本市場の機能が低下するのは高リスク・プロジエクトの遂行にあたって親会社の過剰介入が子会社経営者のインセンティブ問題を引き起こしている可能性を示唆している。 第二の成果については、投資ファンドが介在した非公開化・公開維持型の買収についてイベント・スタディーを適用したところ、有意に正のCAR(累積異常リターン)が観測された。こうした正の株価効果の源泉を精査していくと、公開維持型の買収についてはアンダーバリューの解消が、非公開化についてはやはりアンダーバリーの解消とレバレッジによる節税効果がその源泉である可能性が示唆された。
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