H20年度は、家計内における人的資本の蓄積および女性の労働参加が公共政策によってどのような影響を受けるかを研究した。具体的には1990年より改正され た外国人労働受け入れの変更を自然実験として、居住する市町村で非熟練労働に従事する外国人が増加する場合、高校生の進路がどのように変化するか、また家庭にいる主婦は労働市場から退出するかどうかを、国勢調査および就業構造基本統計調査を使って分析した。 人的資本の蓄積に関しては、単純労働に従事する外国人が増加した場合には、高校生はより大学に進学するという結果が得られた。具体的には1%ポイントの外国人比率の増加は、大学進学率を1%ポイント増加させることがわかった。この結果が頑強で、外国人比率を都市圏別あるいは市町村別に計算しても結果は変わらなかった。 また外国人が景気のよい町にあつまりその場合家計の所得が高く、所得効果によって大学進学率が高まるという可能性を排除するため、父親の所得をコントロールして分析を行ったが結果はかわらなった。また主婦の労働参加に関しては、主婦の学歴によって異なった閣下が得られた。高卒の主婦の場合、居住地における単純労働に従事する外国人比率の増加は、労働市場参加率を下げることがわかった。しかも彼女らは、代わりの仕事を探すわけではなく1、家事に従事することが確認された。一方大卒女性に関しては、居住地における外国人比率が増加した場合、一時的に労働参加率は減少するがそれは短期的で長期的にはそのような効果がないことが確認された。これは大卒の場合、職業選択に柔軟性がある一方、高卒女性に関してはそのような柔軟性がないからであると考えられる。またこの結論は夫の所得をコントロールしたとしても変わらなかった。
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