研究概要 |
本研究の目的は,市町村総合再編後の自治体財政に及ぼされる影響を実証的に検証し,今後の国と地方の財政関係,都道府県と市町村との関係に関する方向性を導き出すとともに,地域自治区単位での住民参加型まちづくりや行財政運営の可能性を,日米比較を通じて探ることにある。初年度にあたる2006年度は,主として日本における市町村合併前後の自治体行財政や地域自治区の実態調査,合併を選択しない小規模市町村の分析等を中心に行った。2007年度は,2008年度から段階的に導入が予定されている地方財政健全化法と自治体行財政の関係等も考慮しつつ,大都市や小規模市町村などにおいて実施されているまちづくりや行財政運営に関するヒアリング調査を行い,実態を検証した。 周知の通り,「平成の大合併」によって,全国の市町村数は1800程度にまで再編成されたが,財政危機下のおける合併であったことに加えて,合併特例債の活用などの財政誘導による財政面への影響や「三位一体の改革」による交付税の縮減などの影響が相まって,多大な財政問題を抱えている自治体が多い。「昭和の大合併」後に,合併した市町村の多くが財政再建団体への転落を余儀なくされたという歴史的事実と比べると多くの相違点を見いだすことができる。 特に先行事例ともいうべき静岡市の場合には,財政誘導による合併特例債の活用と積極財政という側面が強く,三位一体の改革に伴う交付税の縮減による影響が多大なものとなっている。また,後発事例となる浜松市の場合には,人件費の大幅な削減などリストラ型合併という点を特徴としている。地域自治区において住民全員参加型のNPO組織が作られるなどの新しい動きが注目される。ただ,地方財政健全化法の施行によって,財政的に厳しい状況に追い込まれている市町村も多く,そうした中でいかに財政再建と地域の内発的発展を両立させていくのか,今後とも注目する必要がある。
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