研究課題
基盤研究(C)
平成18年度においては、地方団体の歳出決定に財政制度がどの程度影響を与えるかの分析を行った。通常は、主として外生的要因により地方歳出が決定されるため、地方団体には裁量の余地が極めて少ないと指摘されることが多い。そうではないケースを具体的に示すために、もっとも基本的な公共支出である生活保護を取り上げ、生活保護に関するマクロデータを用いた実証分析を行い、補助率が生活保護率に影響を与えるか否かをグラフを用いて検証し、補助率が保護率に大きな影響を与えているのではないかとの結論を得た。拙稿「地方財政のあり方と国庫補助負担金改革」『都市問題研究』(2007年2月号)として公刊した。平成19年度では、国および地方公共団体の行財政構造改革の財政的効果がどの程度であったのかの検証がほとんどなされていないので、試論的に、ケーススタディの手法を活用し、財政的効果の把握と決算との対比を試みた。研究対象の地方公共団体として、大阪府、大阪市、京都市、姫路市、豊中市、泉大津市、をそれぞれ選定した。これにより、地方公共団体の機能別の差異および人口規模別の行動の差異を観察できるものと考えた。最終的には、このうち、姫路市、豊中市および大阪府を取り上げ、ケーススタディを行った。特に、このうちで、比較的詳細な資料が公表されている大阪府を詳しく取り上げた。地方行財政改革に先駆的に取組んできた大阪府の例を通して、改革前の財政見積もりと改革後の決算数値を対比させることで改革の効果を検証した。その結果、暫定的な結論ではあるが、決算ベースでの財政状況の改善は地方公共団体の取組みによる自助努力による効果も大きいが、それ以上に、「三位一体の改革」を始めとする国の政策、またその他の外生的要因が大きく影響している可能性があることを指摘し、研究成果報告書として纏めた。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (2件)
『都市問題研究』(都市問題研究会) 59・2
ページ: 34-45
THE TOSHI-MONDAI KENKYU Vol.59, No.2