日本・韓国・台湾のベンチャーキャピタルのパフォーマンスを比較研究した結果、日本の金融機関では理系出身者が投融資判断に関わることが少なかったがベンチャーキャピタルでは積極的に採用し、技術を持つ投資対象企業の株価の適正な形成に関与するようになった。理系研究者もMBAを取得し、文系・理系という分離したデイシプリンの在り方が改善されつつあるが、台湾と比較すると十分な展開がなされているとは言えない。台湾は80年代に、政府による積極的な海外留学者の帰国を図り、ポスト重化学工業化としてシリコンバレーで生じたハイテクベンチャー起業を台湾の新竹科学工業園区を中心に実現するための包括的な施策を実施し、IT産業分野で上場企業が増加し、世界的な企業を生み出すことに成功した。ベンチャーキャピタルは金融持株会社制度の発足に伴い、各金融グループの中に、ハイテク企業の上場等の金融サービスを提供する金融機関として位置付けられている。韓国については、97年のアジア通貨危機以来、ベンチャービジネス育成強化策が取られ、ITバブル期にベンチャービジネス、ベンチャーキャピタルともに発展し、バブル崩壊とともに沈滞期を迎えたが、回復を見せ、大手ベンチャーキャピタルは積極的な展開を行っている。台湾、韓国、日本ともに中国においても積極的なベンチャーキャピタルの活動を行っているが、欧米のベンチャーキャピタルはケイマン諸島などのオフショア金融センターを経由して積極的な投資行っており、ベンチャーキャピタルの活動が国際的なネットワークの下に展開されていることも明らかとなった。ベンチャーキャピタルが広い意味のプライベートエクイテイに包摂されつつあるが、東アジアにおいても技術とファイナンスの結合した固有の金融分野が確立しつつあり、今後も、発展してゆく可能性十分あるという結論を得た。
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