研究概要 |
18年度に引き続いて,論文作成・報告・投稿を行った. 論文: 1)Entry in tax competition;2)Redistribution and regional development under tax competition 論文1)は,地域間資本誘致競争に参加する地域数を内生化した研究である.競争に参加する地域を与件とする従来の税競争研究とは異なり,最新の研究動向に沿った内容である,しかしながら,結果として競争地域数を内生化しても,従来の「税競争による過小税・支出の傾向」がそのまま当てはまることが示されている. 論文2)は,税競争を地域間公平性の文脈で検討したものである.各国地域政策の興味深い特徴は,地域間公平性を実現するために,地域間直接財政移転のみならず,地域開発政策に重点を置いていることである.他方で,「後発地域への公共投資はむしろ経済効果が小さいので,地域間財政移転で地域間不公平に対処すべき」という批判もしばしば見受けられる.本論文では,このような無駄な開発政策が展開される1つの要因として税競争を捉えている.具体的には,論文では,移動可能な資本の誘致競争の結果として,地域政策が移転政策よりも開発政策に偏り,経済全体の厚生が下落することが示されている. 報告: 論文1)は昨年度にも各種研究会で報告されたが,加筆・修正後に改めて日本財政学会(明治大学,19年10月)において報告された. 論文2)は,応用地域研究会(名古屋大学,19年4月),都市経済学研究会(京都大学,19年6月)及び関西公共経済学研究会(関西学院大学,19年12月)で報告された. 投稿: 論文1)はInternational Tax and Public Finance誌に投稿された(現在審査中). 論文2)はJournal of Urban Economics誌に投稿され,編集者・審査員から高い評価を受けた.修正・再提出を経て,20年4月現在,編集者による最終的な掲載決定を待っている段階である.
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