研究概要 |
研究期間中の雑誌掲載論文:政府間税競争理論:資本税競争を中心にして,フィナンシャルレビュー 本論文は,1980年代以降に急激な発展を遂げた税競争理論の概要を包括的にまとめたものである.税競争に関わる初期段階の研究を詳細に検討した上で,その拡張と位置づけられる諸研究を包括的に整理している. 研究期間中の論文作成:2本 1)Entry in tax competition;2)Redistribution and regional development under tax competition 論文1)は,税競争に参加する地域数を内生化した研究である.競争に参加する地域を与件とする従来の税競争研究とは異なり,最新の研究動向に沿った内容である.結果として,競争地域数を内生化した場合でも,従来の「税競争による過小税・支出の傾向」がそのまま当てはまることが示されている.この論文は,関西公共経済学研究会(兵庫県立大学,18年6月),応用地域研究会(名古屋大学,18年7月)及び日本財政学会(明治大学,19年10月)において報告され,International Tax and Public Finance誌に投稿した. 論文2)は,税競争を地域間公平性の観点から検討したものである.各国地域政策の興味深い特徴は,地域間格差を縮小するために,地域間直接移転のみならず,地域開発政策に重点を置いていることである.他方で,「後発地域への公共投資は経済効果が小さいので,地域間財政移転で地域間不公平に対処すべき」という批判もしばしば見受けられる.本論文では,このような無駄な開発政策が展開される1つの要因として税競争を捉えている.具体的には,論文では,移動可能な資本の誘致競争の結果として,地域政策が移転政策よりも開発政策に偏り,経済全体の厚生が下落することが示されている. この論文は,応用地域研究会(名古屋大学,19年4月),都市経済学研究会(京都大学,19年6月)及び関西公共経済学研究会(関西学院大学,19年12月)で報告された.また,Journal of Urban Economics誌に投稿され,編集者・審査員から高い評価を受けた.修正・再投稿を経て,20年5月5日付けで同誌に掲載されることが決定された.同誌を出版するElsevier社から割り振られた論文の参照番号は,doi:10.1016/j.jue.2008.05.002である.
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