研究実施計画では、夏期休暇に豪州やニュージーランドに渡る予定であったが、出発を春期休暇に遅らせた。その理由は、制度面での知識が十分ではなかったことにある。そこで軌道修正を行い、今年度の前半は、豪州とニュージーランドの銀行市場がどのような経緯で統合されたのか、制度面から考察することにした。特にニュージーランドにおける郵便貯金銀行の民営化に注目した。 今年度の後半は、その制度面の調査結果を元に、論文を執筆した。まず11月から12月にかけて、日本語で論文を執筆した。この論文では、計量経済学的な分析結果が理論と矛盾しないかどうか、金融政策のショック以外にも、財政政策ショックや総供給ショックに対する変数の反応も調べられている。その結果、いずれのショックに対しても、豪州とニュージーランドで、景気や物価の連動がみられた。これは先行研究の結果と合致する結果である。また、昨年度の研究でもみられたことであるが、豪州の金融政策ショックに対しては、ニュージーランドで貸出供給の減少が今年度の分析でも見られた。これは結果が頑健であることを示唆する。日本語の論文は、1月に日本金融学会へ送付済みであり、平成20年度の春季全国大会での報告が決まっている。2月にはニュージーランドに赴き、集中的に英語で論文を執筆した。3月、その成果をシドニー大学で開催されたAustralasian Macroeconomics Workshopで報告した。 さらに、今年度の後半は、昨年度の論文の改訂にも注力した。1月に入って、海外の学術誌へ投稿していた論文に対する審査員のコメントが届いた。編集委員は審査員のコメントに応じて論文の改訂を要求しており、論文は改訂後に再審査となる。コメントは、主に計量経済学的手法の選択に関するものである。3月末現在、審査員のコメントに沿う形で、実証分析のためのコンピュータプログラムを書いている。
|