一昨年、査読付き学術誌へ論文を投稿した。論文で検証した仮説は本研究の柱であり、「金融統合が進んだ二国では、一方の国で金融が引き締められると、両国で活動する銀行が他方の国から資金を移動させるので、後者の国で貸付資金が減って景気が減速する」というものである。この仮説をニュージーランド(以下NZ)と豪州のデータで実証分析した。昨年一月、この論文に対する査読コメントが届いた。したがって、平成20年度の前半、査読コメントに応じて、論文が改訂された。また、五月から七月にかけて三回の学会報告をし、新たなコメントも取り入れられた。 改訂前の論文において、もっとも重要で統計学的に有意な発見は「豪州での金利引上げ後、NZで貸出供給曲線が左方シフトし、NZでGDPが減少する」というものであり、本研究の仮説と整合性のあるものであった。それに対し、改訂後の論文では、複数の異なるモデルを用いて、結果の頑健性が統計学的に示された。いくつもの改訂点のなかで、これが今回の改訂における最大の意義である。改訂された論文は7月中旬に再投稿され、再審査後、掲載が決まった。 上述の研究は大まかなアイデアを実証分析へ持ち込んだものであり、理論モデルを欠いている。そこで、八月頃から理論モデル構築に取り掛かった。当初の研究計画では、理論部分は共同研究に持ち込むことを予定していたが、モデル化のアイデアが固まってきたので、個人研究に変更した。そのモデルでは数値計算が必要なため、八月から十月を数値計算の学習に費やした。平成20年度の後半はモデルのシミュレーションに費やした。予想以上に前述の改訂に時間を取られたため、これらの結果はまとめられていないが、まとめられ次第、査読付き学術誌に投稿する。
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