本研究は、戦後日本の企業城下町において形成された下請協同組合および協業組合の設立から解散に至る過程に着目し、地域下請企業にとっての組合の歴史的役割を考察する。そのうえで、下請企業および地域経済の再生にとって必要とされる新たな組合活動について展望することを課題としている。 特に本年度は、長野県伊那地方で活動したT協同組合ならびに茨城県日立で事業展開を行ったK協業組合の事例に注目して、以下の研究を行った。 まず第1に、K協業組合に関する調査過程で、同組合が2002年10月末をもって営業を停止したこと、その後S社の下で残務整理が行われていることが判明した。そこで、同社の担当者に連絡を取り、開示可能な資料の提供を受けるとともに、K組合が積極的に事業活動を展開していた時の組合理事長を紹介してもらい、当時の活動に関するヒアリング調査を実施することができた。その結果、下請協同組合とは異なる協業組合の活動実態について新たな知見を得ることができた。 第2としてT組合に関する研究では、同組合の親企業での資料調査を行い、その際、同企業が90年代に青森県八戸に積極的な進出をはかったこと、それと相前後して下請企業も青森進出を行っていることが判明した。こうした域外進出は、域内企業および組合の活動にも影響を及ぼしたことが予想された。そこで青森進出を行った企業2社で、進出の経緯、その際の親企業の役割、組合との関係などについてヒアリング調査を実施した。こうした調査と並行して、長野県伊那地方での産業発展・産業集積の歴史的推移に関する資料収集も実施して、T組合が活動した時代の歴史的背景についての新たな知見も得ることができた。
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