研究概要 |
本年度の研究は,第1に,そしてこれが中心であるが,国際石油企業,特に最大企業であるエクソンモービル社の1990年代初頭以降の原油と天然ガスの生産活動について検討した。その主な結論は以下の通りである。 (1)アメリカのメキシコ湾の大水深海域,旧ソ連邦諸国,西アフリカ諸国でのエクソンモービル社の活動は1990年代末までに原油の生産に結実した。西アフリカの場合は,2005年には同社の世界における最大の原油生産拠点に転じた。西アフリカと旧ソ連邦は,原油の確認埋蔵量,および油田の開発状況,生産開始予定などからして今後一層の生産増が可能と思われる。なお,天然ガスについては見るべき成果は乏しい。 (2)3つの地域・海域,特に大水深海域での活動は,1990年代初頭頃から始まる原油と天然ガスの探鉱,開発などでの技術面の革新,あるいは顕著な発展に支えられ,かつこれと相伴って進展した。メキシコ湾の大水深海域での活動は先行した大陸棚(浅海域)での操業を前提とはしたが,大水深海域での操業を可能にする探鉱・開発技術などの高度化が不可欠だった。 (3)エクソンモービル社(エクソン社)にとってモービル社を買収したこと(1999年)が,これら新開の地域・海域,特に旧ソ連邦と西アフリカでの活動を強化ないし飛躍させる契機となった。西アフリカにおける原油の最初の獲得,およびその急進展は,モービル社の権益の継承によるものである。 第2に,本年度は続いて,1970年代初頭以降の中東・北アフリカ地域において,国際石油資本が所有する油田の支配権が如何にして失われたかの分析を試みた。当初,エクソン,BP,RD=シェルなどは,現地政府との交渉において本国政府の外交支援を直ちに要求していないこと,またエクソン社の場合はリビアでは液化天然ガス・プラントの建設・運営によって現地政府との融和を図ったこと,などが明らかになった。
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