研究概要 |
1,本年度の研究は,第一に戦後経済復興期〜高度経済成長期に工業開発が取り組まれた地域に関する資料収集,第二に政策を受け止める側の地域社会の経済構造に関する分析,第三に昨年度収集した資料の考察結果や聞き取りに関する研究会や文字媒体による発表の三つにまとめられる. 2,工業開発が取り組まれた地域に関する資料収集については,県文書に関して,愛知県公文書館,岐阜県歴史資料館,大阪府公文書館など,現実に工業開発が進んだ地域資料に関して,静岡県三島市,兵庫県尼崎市など,工業開発が農村社会に与えた影響に関する同時代にまとめられた文献に関して,国立国会図書館,一橋大学図書館などへの資料収集調査を行なった.兵庫県尼崎市においては,農業委員会議事録と同地区の旧土地台帳の所在が確認され,その一部をカメラによる撮影・複写を行なった. 3,政策を受け止める側の地域社会の経済構造に関する分析としては,当該期の地域経済を国内経済全体の中に位置づける作業として,国勢調査報告を用いての,産業別人口の地域分布とその変化に関するデータ処理とその分析を行なった.その結果,第三次産業部門の就業人口の増加が第二次産業部門の増加とともにみられる地域の場合,工業開発に対して消極的な態度を取る場合があることが判明した.4,昨年度収集した資料に関しては,四日市の事例に関する考察の一部を,『大塚久雄『共同体の基礎理論』を読み直す』で発表した.聞き取り調査のうち松村美與子氏の聞き取り調査に関して,静岡県近代史研究会6月例会で報告し,その資料的価値や先行研究との関連に関する批物を受けたうえで,『社会科学論集』122号に掲載した.
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