本研究は、都市小工業史・労働市場史に関する国際比較の試みである。 1)研究の枠組み作りの一環として、ベンチマークとなる日本の都市小工業に関する筆者のこれまでの研究を、グローバル・ヒストリーの中に位置づける作業を行い、8月に開催された14^<th>International Economic History CongressのSession79(フィンランド・ヘルシンキ大学)で報告した。その内容の一端は、「戦間期日本における都市型輸出中小工業の歴史的位置-在来的経済発展との関連」(中村哲編『近代東アジア経済の史的構造:東アジア資本主義形成史III』)として2007年4月に刊行された。 2)都市工業のケーススタディの対象となる玩具工業に関しては、(1)東京玩具工業史に関する業界関係者にアプローチし、インタビュー計画を策定した。(2)ドイツ、イギリスの玩具工業関係の統計データの収集を開始した。 (3)都市労働市場史に関しては、(1)ロンドンのセンサス集計データの入力作業を開始し、1851-1901年間のロンドンの労働市場に関するデータ・べ一スを作成した。(2)ロンドン・バーミンガムの1851〜1901年の期間のセンサス個票を収集し、記載内容の検討を行った。(3)London School of Economics and Political Science図書館所蔵のNew Survey of Londonについて、すでにデジタル化されている部分についてはデータ・べ一スを入手し、それ以外の部分については、デジタルカメラによって撮影を行った。 4)そのほか、戦間期ロンドンの工場統計、イギリス関税委員会史料など、イギリスの都市労働市場および玩具工業関連の一次資料の収集を行った。
|