研究概要 |
本研究は、都市小工業史・労働市場史に関する国際比較の試みである。 1)研究の枠組み作りの一環として、ベンチマークとなる日本の都市小工業に関する筆者のこれまでの研究を、グローバル・ヒストリーの中に位置づける作業を行い、その内容を"From Peasant Economy to Urban Agglomeration: The Transformation of Labour-intensive Industrialization'in Modern Japan"と題して英文のDiscussion Paper (CIRJE-F-516,University of Tokyo)にまとめた。日本における都市小工業の発展を、筆者の主張する在来的経済発展論の枠組みの延長線上で論じた点に、本稿の特徴と意義がある。その内容は、国際東方学者会議(2007年5月)および京都大学東南アジア研究所(2008年3月)の国際コンファレンスで報告され、アジア経済史、経済発展論の研究者からも反響を呼んだ。 2)都市工業のケーススタディの対象となる玩具工業に関しては、(1)東京玩具工業史に関する業界関係者にアプローチし、3名の問屋関係者にインタビューを行った。(2)ニュルンベルグ、ミュンヘンおよびロンドンにおいて、ドイツ玩具工業関係の資料および統計データを収集した。 3)都市労働市場史に関しては、ロンドンのセンサス集計データの入力作業が終了し、1851-1931年間のロンドンの労働市場に関するデータ・ベースがほぼ完成した。 4)そのほか、大都市における工業発展比較の観点から、19世紀末から20世紀前半のパリの産業発展に関する資料蒐集を行った。
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