平成18年度は次のような研究活動を行った。 1 地方行政機関による漁業権の付与状況の検討:すでに収集済みの『青森県報』を整理し、そこに記載されている漁業権付与状況を集計した。集計期間は明治42年9月から44年10月までであり、定置漁業権が主で、漁業権番号の591番から812番までである。集計項目は、免許期間、漁場の位置、漁業種類、漁獲物の種類、漁業時期、漁業権者、その他特記事項であり、陸奥湾内のイワシ関係漁業権、太平洋沿岸地域のマグロ関係漁業権、津軽海峡地域のニシン関係漁業権、日本海沿岸地域のサケ・マス関係漁業権に大別できる。 2 水産加工品の販売と商品情報に関する調査、集計:漁業権の価値は漁獲物の多さによるが、その前提は、漁獲物の商品化が可能であることである。ことに、イワシ、ニシンは魚肥に加工して販売する。また、サケ・マスについても加工が重要である。こうした前提条件を解明するため、下北郡川内の菊池家文書に着目し、取引に関する書簡やそこに含まれる商品情報を収集、解読し、一部は集計した。その一端は論文としてまとめられた。 3 第二次大戦後の漁業制度改革に関する資料収集:明治漁業法体制から、拳固婦漁業法体制への転換についての資料を収集するため、青森県庁を訪れた。そこで、漁業権の転換作業や、海区漁業調整委員会の関係資料を収集した。 4 北海道漁業と青森県漁業との関係の解明:青森県漁業は北海道漁業との関係が深い。この関係は、漁業出稼ぎは勿論のこと、青森県の漁業者による北海道漁業の経営や、水産製品の函館への出荷等、多岐にわたる。水産加工品の検査等も、青森県の漁民は函館の制度に左右される面が多い。そこで、北海道のニシン漁場、ことに下北の漁民が経営を行っていた留萌のニシン漁場を尋ね、佐賀家文書の収集を行った。
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