近代日本の漁業権は、物権として認められている。この規程は明治34年に成立した漁業法にはなかったが、明治43年の漁業法改正によって成立した。この規程は第二次大戦後の漁業制度改革によっても維持された。しかし第二次大戦後の漁業権は改革以前の制度と比べて、売買や譲渡に規制が強く、むしろ改革以前の制度が漁業権の私的財産としての権利を多く認めていた。それでは、改革以前の漁業権の設定や運用はそのようにしてなされ、どのように運用されていたのか。本研究はこの点について、青森県をフィールドとして、実証的に解明したものである。本研究は、次のような手順によって実施された。 1.事前に集めていた青森県報を整理し、また、同文書を所蔵している青森県立図書館やこれをマイクロフィルムによって保管している青森県史編さん室を訪れ、一層の補充にあたった。また、同県報に記載されている漁業権の認可や移動の記事を拾い集める作業をし、それを表にまとめた。 2.三沢市立図書館を訪れ、同館が保管している三沢市の行政文書を調査し、旧三沢村や三沢町時代の漁業関係行政文書や、三沢漁業組合の関係文書を収集した。また、その内容を解読し、数量データは表にまとめた。 3.野辺地町立歴史民俗資料館を訪問し、同館関係者とともに、同町の旧家である野坂家の所蔵資料の閲覧と解読作業を行った。この作業には、青森県在住の研究者の助力を得た。 以上の作業をすすめ、また研究史関係文献の収集と整理も行い、研究の意義を再確認した。また、最終年度には、作業結果の取りまとめ作業を行い、また、研究結果をレポートとしてまとめ、印刷した。
|