昨年度までに、都市の家族史は一段落とし、本年度からは農村の家族史に取り掛かった。そこでまず、農村の家族史の基本的史料として住民台帳や教区簿冊などのデータベース化を行った。 こうした研究を従来リードしてきたケンブリッジ・グループの用いた史料は全国404教区の教区簿冊の結婚記録であるが農村の類型を考慮する必要からそこに含まれない教区も対象としたデータベース化を試みた。本年度はグロースター州に関して、既に活字化されている教区104教区の16世紀から18世紀前半までのすべての記録をデータベース化した。さらにケンブリッジ・グループの決定的弱点である階層区分という点を考慮して、中位の階層以上の結婚記録である結婚許可状記録をハンプシャー州に関してデータベース化した。 これらのデータから、スネールが2002年に発表した結婚と移動に関する研究成果を検証すること可能になり、それに基づく論文を作成中であるが、その一部の階層差に関する部分をワーキング・ペーパーとして公刊した。 なお、昨年度出版した都市の家族史に関する拙著の合評会などの機会が、本年度いくつかの研究会などで与えられ、それらを通じて得られた新たなアイデアも、農村の家族史の中で検討することが可能となった。また、本研究のテーマと密接に関係する同時期の思想と社会に関する書評も公刊することができた。
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