研究概要 |
本研究の課題は、1970年代以降のいわゆる「銀行離れ」が進んだとされる日本企業の資金調達の実態について、個別企業のレベルから可能な限り接近し、資金調達方法の変化と当該企業の経営行動の相互の関係性を検証・考察することである。平成18年度は、この研究を進めるための基礎的データの探索に取り組むとともに、このような問題をいかなる枠組みで捉えるべきかについて、E.Penroseの企業成長の理論(Edith Penrose, The Theory of the Growth of the Film)などと関連付けながら考察した。 すなわち、企業の資金調達方法の変化は当該企業の戦略の変化と何らかの因果関係を有するであろうし、また、同じく資金調達方法の変化は業績評価の方法の変化とも何らかの因果関係を有するであろう。本研究で個別企業の歴史を取り扱う際、これらの相互の長期の関係性を追い、そこに経営者のどのような意思が介在したか、また、これらが当該企業の資源の蓄積にいかなる影響を与え、さらには成長や競争力の推移とどのように関わったのかを分析する必要があろう。はたして資金調達方法の変更が中長期の企業の成長を制約する、あるいは逆に成長を促すという関係性を認めることができるのであろうか。18年度末時点では、このような分析に資する分析枠組みを模索するにとどまっており、引き続きかかる観点からの考察を重ねなければならない。
|