本年度前半(10月中旬までは、昨年度までの研究成果のアウトプットが中心であった。6月には、1960年代の移民女性労働の実態を論文として、所属大学院の紀要に発表し、10月には1940年代以降をまとめる形でイギリス史研究会の例会で報告した。これら研究成果の発表を通して、マイノリティ女性のジェンダーは、移民過程、および移民後のホスト社会への定着の程度によって変化し、そのことが移民女性の労働、生活、ホスト社会との関係に与える大きな影響について詳細な検討が必要であることが再認識された。 本年後半は、年度末に予定していたイギリスでの資料調査に向けての準備を行い、2008年3月にロンドンの国立公文書館を中心に資料収集を行なった。今回の資料収集において労働省、外務・コモンウェル省、内務省などの文書を中心に1950年代後半、60年代70年代初頭の関係資料を多く収集した。分析はこれからであるが、移民初期において、イギリス政府が移民女性への関心も評価の低かったが、1960年代後半から70年代には、サーヴィス産業の発達した福祉国における労働市場の底辺を支える低賃金労働力として移民(マイノリティ)女性の位置づけて行ったか過程が実証的に示すことが可能である。また、それにたいするマイノリティ女性の抵抗(NHS労働者のストライキなど)との関連もあきらかになるものと考える。これらの成果は2008年9月に予定されているシンポジウムで報告することを予定している。
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