本研究は、1890年代以降の中国商人による外国企業保有の商標権侵害行為と、1923年に制定された中国最初の商標法制定に至る経緯を明らかにした。中国商人は、売れ行きの良い外国製消費財の模造品を自ら製造販売するか、あるいは関西の日本人製造業者に委託製造させて、販売していた。特に、日貨排斥運動が盛んになった1915年以降、日本の製造業者の中に、意図的に西洋企業製品の模造品を製造し、中国商人に委託販売する者が出現したため、自国企業商標保護に対する日本政府とイギリス政府の対策は、容易に一致点を見いだせなくなった。これが、1923年、中国政府による独自の商標法を制定可能にした背景である。
|