研究概要 |
2006年9月にドイツに渡航し、資料の収集にあたった。とくにマンハイムのZUMA(Zentrum fur Umfragen, Methoden und Analysen)では1971年のミクロセンサス追加調査(データベース化された統計資料)を利用することができ、これが、研究内容の豊富化と一定の転換をもたらした。同資料は、調査時点の1971年のみならず戦後ドイツの社会変動についてきわめて豊富な内容のデータを含んでいる。その分析の過程で、戦後ドイツの社会変動にとっての高度成長の意味が、研究テーマとしてより鮮明に浮かび上がってきた。現在、とくに1960年代における労働協約と女性労働の変容に焦点をあてて研究を進めている。労働協約についてはすでにワイマール期以来、熟練・半熟練・不熟練という労働者の伝統的な3区分と現実の作業内容との乖離が問題になってきたが、1960年代に、作業内容の難度を基準とする作業評価方式にもとづく賃金グループへの転換がなされることにより、賃金協定をめぐる長年の懸案に決着がつけられた。女性労働についても、同じく1960年代に重要な変化が生じた。「男は仕事、女は家庭」という伝統的観念は第二次大戦後もなお根強く残っていたが、高度成長下の労働力不足のなかで(パートタイムを含む)女性労働に対する需要が大きく高まるなか、伝統的性別分業観に変化が生じ、女性の就労が積極的に評価されるようになるのである。 研究内容について、名古屋の中部ドイツ史研究会(2006年12月)と京都のドイツ現代史研究会(2007年1月)で報告の機会を与えられ、貴重な批判・助言を得ることができた。これらを生かしつつ、現在、上記のような内容の論文を執筆中である。さらに、上のミクロセンサス追加調査等を用いて、戦後の社会移動(階層間移動)に関する研究を進めている。
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