札幌市内の3病院における看護師117名に対して、自由記述方式の質問紙調査を実施した。看護研究者の協力を得て、得られたデータについて内容分析を行った。すなわち、経験に関するカテゴリー、知識・スキルに関するカテゴリーを抽出し、自由記述データを、これらのカテゴリーに沿ってコーディングした。コーディングされたデータに基づき、キャリアを初期(最初の5年間)、中期(6〜10年目)、後期(11年目以降)の3段階に分けた上で、経験と知識・スキルの関係性についてクラメールのファイ係数を算出した。その結果、次のような点が明らかになった。すなわち、(1)10年目以降の後期においても、看護師は経験から積極的に学んでいること、(2)患者・家族との関わりから看護師が学ぶようになるのは、中期以降であること、そして(3)「難しい症状を持つ患者・家族の担当」「職場における指導的役割」「研修・研究活動」といった困難な経験が、初期における看護師の学習を促進していることが明らかになった。 また、患者志向の医療で定評のある大阪市内の病院を対象にインタビュー調査を実施した。インタビュー調査では、同院の設立から現在までの歴史をたどり、組織としてどのような課題に直面し、どのように解決していったかについて検討した。その結果、同院では、医師および事務分野において革新的リーダーが存在していること、また、医師・看護師・事務スタッフのパワー関係が対等に近いこと、理念をベースにしてそれを制度化していることが明らかになった。
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