研究概要 |
本研究は,中小企業における競争優位の獲得を,ものづくり能力という観点から検討することを目的としている。 本年度は,第一に,ものづくり能力を向上させることを,技術力という角度から考察した。具体的には,中小企業が自社の技術力を向上させるだけでなく,それを競争優位に結びつけるためには何をなすべきかについて整理することを試みた。その際に,中小企業の経営資源が稀少であり,人員的・時間的余裕も少ないという事実に鑑み,既存技術を活用することと,日常的な業務の中で取り組むことができるような手法を抽出することを意識した。その上で,これらの研究成果を公表することを念頭に,原稿のとりまとめをおこなった。 第二に,ものづくり能力を,さらに幅広く検討するための作業にも取りくんだ。特に企業が立地する地域との関わり方が,その企業の能力にどのような影響を与えるのかという点について,検討を深めた。どのような中小企業にとっても立地する地域は身近な存在であるが,それを適切に活用したり相互作用を持ったりすることで,経営戦略の構築など,ものづくり能力の向上に大きな可能性をもたらす。また,競争優位の獲得にも寄与する。この点については,研究成果の一部を論文として公表することができた。さらに,環境保全やCSR,地域経済への影響といった要素についても射程に入れて,研究を進めた。 これらの研究プロセスにおいては,中小企業論だけでなく,経営戦略論,組織論,マーケティング論などの分野から得た知見を活かすようにつとめた。統計データも活用している。また,できるだけ中小企業の実態に即したモデルを開発できるように,視察や調査もあわせて行った。さらに,考察する業態や業種もできるだけ多様なものを対象とするようにつとめた。
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