研究概要 |
本年度は,これまでの研究をふまえつつ,中小企業における競争優位獲得とものづくり能力について,下記の三点から研究をすすめた。 第一に,技術という側面から,ものづくり能力の強化について考察を深めた。とりわけ,中小企業が技術の急激な変化や多様化に,いかに対応していくべきかについて,組織的な対応のあり方と技術者の育成といった点を中心に探った。 第二に,環境経営という側面が中小企業に与える影響について,引き続き検討した。環境経営への取り組みは,戦略立案の能力を高めうる。中小企業の場合,環境保全への意識が高まることにより,経営資源が稀少であるからこそ,既存の事業を異なる角度から捉えるようになっていくためである。特に既存事業が成熟している場合に効果的であることが示唆された。 第三に,中小企業のものづくりを,アウトプットとしての製品以外の側面から検討した。具体的には,これまで扱ってきた開発や製造,マーケティングだけでなく,ビジネスプロセス全体に着目した。その結果,他社と同様の製品を提供している場合であっても,プロセスの各段階で差別的要素を持ち込むことにより,総合的に競争優位を獲得できうることが明らかになった。中小企業が自社のビジネスプロセス全体を再確認することで,事業の定義そのものが変化したり,競争に対する捉え方も進化したりするためである。持ち込む差別的要素をいかにして探索するかについても検討した。 これらの研究については,学会で報告したり,論文の執筆をすすめたりすることにもつとめた。
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