本年度は、研究対象産業をエレクトロニクスと自動車に定めて、データー収集や企業への聞き取り調査を中心に研究を行った。調査を通じて確認しえた点は、東アジアの産業は、台湾や韓国のEMS企業が中国に主要な生産拠点を移しており、中国を中心にしてデジタル機器の世界的な供給拠点が成立していこと、産業のコアである自動車産業では、わが国ではトヨタ、日産の北部九州工場がアジア、特に中国のマザー工場化してきており、対岸の韓国では現代自動車の生産量が急増して200万台を超えつつあることなどである。また自動車産業は、環境エネルギー問題への対応を背景にして、急速にエレクトロニクス化が進んでおり、自動車とエレクトロニクスの融合の動きが活発になっていることや、カーエレクトロニクスは、自動車産業はもとより電機産業においても重要な技術戦略課題になっていることを確認した。 そこで、このような動向を探るべく、11月に韓国のソウル大学、KOTRA、韓国自動車工業会等を訪問調査し、各種データーを入手した。ここでの結論は、現代自動車およびサムソン電子はカーエレクトロニクスについて慎重であり、わが国と大きな差が生まれつつあるということであった。またわが国の電子工業会や自動車工業会、トヨタ自動車本社、フォーイン等を訪問し、わが国の動向についての情報の収集にあたった。このことと連動する研究活動として、広島大学、山口大学、福岡大学の自動車研究者と西日本自動車産業研究会を立ち上げ、2回研究会を開催した。次年度はさらに活発に研究会を開催する予定である。 今度末には、これまでの調査でえた事実を基に論文作成に部分的に着手したが、形になった成果は乏しい。しかし、平成19年には4月に台湾東海大学産業マネジメント・シンポの招待基調講演で本年度調査成果を利用して日本企業の技術戦略について発表行い、リーディング企業の戦略行動については5月Hawaii International Conference on Businessで発表することが決まっている。
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