平成18年度は、わが国とスウェーデンの老人ホームにみられる組織変革と低コスト化の動向を調査した。スウェーデンの老人ホームでは、介護職員の配置状況(各時間帯の職員配置数)および勤務シフト(早出、遅出、日勤等の勤務シフトと勤務時間)の変遷に目を向けるとともに、食事、入浴、排泄を中心とした3大介護に関わる介護業務の見直しについて、現状を概要調査した。わが国の老人ホームについては、介護保険制度実施前から現在までの経営理念および介護理念の形成プロセスおよびその変革プロセスを調査した。それとともに、低コスト型の介護サービスシステムを構築する方法については、マンパワーの最適化と介護業務の見直しの観点から現状を調査した。 平成19年度は、スウェーデンとわが国のユニット型老人ホームにおける介護職員の介護サービスシステムを調査した。両者を比較した結果、相違点として、(1)スウェーデンの老人ホームでは介護サービスの安定性のため個々のユニットが自己充足的に介護職員を勤務表上で確保していること、(2)スウェーデンの老人ホームでは介護サービスレベルを設定し、そのサービスレベルを維持するために、一定数の介護職員を安定的に勤務表上で確保していることが明らかとなった。 スウェーデンの老人ホームの発想に比べて、わが国の老人ホームの発想では介護職員を疲弊させ、介護サービス組織の崩壊につながりかねない。それを回避するためには、組織変革のプロセスとして、(1)施設で介護サービスの内容とサービスレベルを設定し、(2)勤務表上で介護職員の勤務人数を平準化させ、設定された介護サービスを維持する必要人数を下回らないように職員を確保し、(3)それを上回る人数を確保できた日には、余剰人員に対して独自の業務を割り振ってサービスの質を向上させるようなサービスシステムを再構築し、合わせて適正な規模の介護ユニットに細分化する組織変革が求められる。
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