量的アプローチに基づいた質問紙調査を行い、補完的な文献調査を加えて本研究の統括を行った。質問紙調査の目的は、平成18年度の質的アプローチによるインタビュー調査に続けて、日常的に職場において異文化(日英)間で相互接触を持つ個人を対象として、リーダーシップ・メンバーシップに対する価値観および関連項目を定量的に調べることであった。調査参加者は、在日英国商工会議所およびThe Japan HR Society会員の有志であり、電子メールおよび質問紙WEBサイトへの勧誘により質問紙を配布・回収した。返答した調査参加者は、全員、職場において日本または英国の国民文化背景を持つ者の間(異文化間)でリーダーシップ行使を伴う相互接触を日常的に行っていることが特定質問項目で確認できた。在日英国人参加者は、「最も有能なリーダー」が英国人であろうと日本人であろうと、1.友好的な行動についての価値、2.公式権威に基づく課業達成志向を受容する価値、3.支配に関する価値の順でチームワーク価値を重視していた。さらに、「最も有能なメンバー」に関しても重視されるチームワーク価値の順位は同じであった。これに対して、日本人参加者は、友好的行動を最重視するのは在日英国人と同じであったが、これ以外のチームワーク価値の様相は、全く異なっていた。すなわち、支配に関する価値は、リーダーに関して2番目に重視されるが、メンバーに関しては3番目に重視されている。最も顕著な相違点は、公式権威に基づく課業達成志向を受容する価値であり、リーダー・メンバー共に、反対極を重視している。在日英国人および日本人参加者のチームワーク価値は、筆者による在英国日系企業の先行研究と比較すると、公式権威に基づく課業達成志向を受容する価値および支配に関する価値が、かなり低くなっている。換言すれば、仲良く仕事をすること(友好性)が最重視されていて、職務遂行における正当な権力行使(支配性)や課業達成受容がその次になっているのは、日本国内の職場における異文化間相互接触の特徴であると考えられる。
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